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父は週末、学会など自分が遠出するときは、よく家族を連れて行ってくれた。
父の仕事に邪魔にならないように、基本的な観光は母と二人で楽しむ。
そして父の仕事が終わると合流し、調べて予約しておいたディナーに舌鼓を打った。
そういった中で依舞稀はたくさんのホテルに泊まり、たくさんのホテリエの方々と出会い接することになった。
彼らのサービスを体感することで、憧れを抱くようになったのは依舞稀にとって自然なことだったのかもしれない。
一度自分で自分の夢を実感してしまうと、もうその夢以外になにも浮かばなくなってしまった。
けれどそれを自分の両親に言い出すとなると、依舞稀は頭を抱えてしまう。
どんな形であっても医療に携わる職業であるならば言い出しやすいのだが、ホテリエは全くの畑違いの職業だ。
両親を尊敬し愛しているからこそ、道が違うことをどう思われてしまうだろうか。
そう考えるとなかなか進路を決められなかった。
しかし時は刻々と流れていく。
「依舞稀、進路はどうするつもりなんだ？本当はもう決まってるんじゃないのか？」
いよいよギリギリになったとき、父は依舞稀を自室に呼びそう切り出した。
「聞いてくれる？」
依舞稀はおずおずと口を開く。
本当のことを言えば、なにをどう話せばいいのか頭の中で纏まっていなかった。
しかしせっかく忙しい父からこういう機会を作ってくれたのだ。
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