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今がチャンスということなのだろうと覚悟を決めて、依舞稀は父と対峙することにした。
「今までは何の疑問もなく医者を目指してたの。でもいざ医大を選択するとなった時、本気で目指したいと思っている人と自分の温度差に気が付いた」
なにがなんでも医者になりたいと思い医大を選択する人と、自分の環境で医大を選択する自分。
その違いを目の当たりにし、自分には何の覚悟もないことに気が付いたのだ。
人の生死に関わる仕事を軽く考えすぎている自分の愚かさを痛感し、自分では人の命を救えないということに。
自分の気持ちの全てを口に出すことは得意ではない。
けれど今回ばかりは、しっかりと向き合っていかねばならないとわかっている。
依舞稀はたどたどしいながらも思いの丈を切実にぶつけた。
「それが依舞稀の本当の気持ちなのか？」
全てを話し終わると、父はそう言って目を伏せた。
このあと父は果たして何というのだろうか。
依舞稀は大きな不安に襲われながらも「そうです」と小さく答えた。
父から一言、認められないと言われてしまえば、依舞稀の夢はそこで潰えてしまう。
そう思うと手が小刻みに震えた。
「依舞稀がそんなことを考えているなんて思いもしなかったよ」
父は小さく溜め息をついてそう言った。
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