2915人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ
依舞稀にとっては嬉しくも有難くもないことではあったが、依舞稀自身の友人たちは自分が違うと言えば信じてくれたし、光星の友人と依舞稀との接点は殆どなかったため、特別問題視はしていなかった。
そんな面倒くさいが充実した大学生活も、就活が始まれば途端に嘘のように忙しくなる。
「就活がこんなに大変だなんて知らなかった……」
「今は自分達が企業を選べる側だ、とか言ってた先生誰よ」
「いつまでたっても私達は選ばれる側じゃん」
毎日友人と顔を合わせては愚痴を言いながらストレス発散をした。
ホテルといってもピンキリである。
『一流』といわれるホテルへの就職を目指している依舞稀にとって、この狭き門は掻い潜るのも恐ろしいほどに大変だろうとは思っていた。
それでも自分に夢を持たせてくれたホテルで働きたい。
そんな思いを胸に抱いて試験面接を受けたものの、結果は不合格。
今回はご縁がなかったということで……などという言葉で断られてしまうなんて……。
依舞稀は不合格通知に顔を埋めて「うう～っ」と唸り声を上げた。
その後も受けたホテルから立て続けに容赦なく不合格通知が送られてくる。
もう、「一流老舗」にこだわってる場合じゃないわ。
そう悟った依舞稀は、ここ最近でサービスの評判がよく、営業企画に力を入れているホテルを探し始めた。
書店に行き、旅行雑誌を買い漁り、ネットやSNSを駆使して自分の理想のホテルをひたすら探した。
そうして調べていくうちに、依舞稀は一つのホテルにいきついた。
最初のコメントを投稿しよう！