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「あら、あなたが高良さんのところのお孫さん?」
不意に声をかけられ、振り返ると、五十、六十のおばさんが立っていた。
「ちょうど良かった。もう、空き家になっちゃうからどうしようかと思って。ほら、おじいちゃん、長男さんのところに同居することになったでしょう。さ、入って入って」
言われるままに庭を通り、玄関へ向かう。
「高良さん、こんな素敵なお孫さんがいたのね」
コウラさん、一瞬、甲羅かと思った。亀が頭をよぎる。
「本当にねえ、急だったものだから、いろいろそのままなのよ。ごめんなさいね。でも片付けるのも手間がかかるでしょう。この家にあるものは何でも自由に使ってもらっていいから。こちらも助かるのよ」
「はあ」
まくしたてられ、頭がついていかない。
「裏の畑も使ってもらっていいから。おじいちゃん、畑仕事が趣味だったのよ。植えてあるものも、自由にしてちょうだいね」
「お家賃は一万二千円って聞いてるかしら。いやね、住んでもらえるだけで助かるのよ。管理するのも大変でしょう。本当にあなたが来てくれて良かったわ。うちは隣ですからね、月はじめでも終わりでも、持ってきてくれたらいいから。あ、今月はあと一週間だから、来月のぶんからでいいですからね。サービス」
最後に軽くウインクしながら、あっという間におばさんは帰っていった。
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