なんてことない

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「大丈夫、仕事なら、辞めてあるから」 亀が言った。 * * * * * * *  ああもう、何もかもどうでもいい。どんなに頑張ったところで、手柄はあいつのものだ。  しかし、持ち合わせた無駄な責任感と、絞り出せない勇気のせいで、机の上にある仕事を放り出すことすらできない。  結局、今日も、日付をまたぐほどに残業し、重い体を家まで引きずって帰る。  夕ご飯というには夜も更けすぎて、もはや何ご飯かもわからないものをコンビニで仕入れ、一人、黙々と食す。  寝る時間は確保したいので、テレビもつけず、そそくさとシャワーを浴び、ものの数分で布団の中だ。  寝る前はいつも、何かわからない感情が頭の中にあふれ、無駄な思考でそれをかきまわす。  基本的人権の尊重だったか。全て国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。はずである。お金に困っているわけではない。  しかしこれは、健康で文化的と言えるのか。  生きるために仕事をすると人は言うが、これではまるで、仕事をするために生きているようなものだ。 たまの休日も、もっぱら体力の回復に使っている。  ほら、また無駄な時間を使って睡眠を削ってしまった。結局、朝起きたらまた私は仕事に行くのだろう。  いっそ死んでしまおうか。死ねばあいつらも少しはわかるはずだ。でも、どうやって。苦しいのは嫌だし、迷惑もかけたくはない。死ぬのも簡単ではない。  いや、私は死ぬ勇気すら持っていないのだ。過労死。せいぜい私にできるのは、それくらいのものだろう。  そんな思考に睡眠時間を削られながら、限界を迎えた体が私を眠りへ引きずり込むのだった。
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