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そして母がなにかを言う前に中年の女性に俺は抱き抱えられた。
俺はそのままゆりかごの中に寝かせられて、別のメイドによりゆりかごが運ばれた。
母は数人の厳つい男達に押さえつけられて、怒鳴り声が交差していた。
「離しなさい!!無礼ですよ!!」
「貴女の役目はもう終わりました、こちらに…」
それしか聞き取れず、一室の中に入ると静けさに覆われる。
ゆりかごから抱き抱えられて、ベビーベッドに移される。
さっき見ていた手の甲を眺めていたら、変な模様があった。
逆さ十字のような模様の刺青があった、何処かで見た事があるがそんな事あり得ないだろう。
周りにいた人はこれを見て顔色を変えていた、今の赤子である俺は天井を眺める事しか出来なかった。
少ししたら大きな音を立てて誰かが部屋に入ってきた。
「浅ましい女だ、子供を産んだらもう用はないというのに…」
「全くですわ、愛人の分際で貴方の愛を手に入れたと勘違いして…後継ぎを産んだら用はないのに…」
「……その後継ぎもアレではな」
男女が会話をしながら入ってきた、感情的になっているからか少し声が大きくなっている。
ゆりかごにいる俺を眺めるのは、真っ赤に燃える短髪に髭が濃く鋭い瞳で威厳がある男と、美人だろうというのは分かるが化粧が濃くていいところを全て台無しにしている茶髪で後ろを一つのだんごにしてまとめている真っ赤なドレスの女性がいた。
この手の甲の模様といい、この二人にも見覚えがあった。
でもそれを見たのは、生前プレイしていたゲームだった。
冷たく突き刺さるように鋭い四つの瞳に見つめられる。
男性は父親かもしれないが、もう一人の女性はゲーム通りなら…
「これが汚らわしい悪魔の子?とんだ恥さらしね」
「コイツを後継ぎにすると我がローベルト伯爵家が世間から笑い者だな、絶対に屋敷から出すな」
不穏な話をしていたと思ったら俺の手を掴んで、手の甲をマジマジと見ていた。
悪魔の子の紋様、見覚えがある二人…そしてローベルト伯爵家。
生前の記憶が早送りのように頭の中で駆け巡っていく。
父とあの女性は俺がやっていた妹に借りたゲームに登場していた夫婦なのだと確信した。
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