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その中でもカイウスルートが特殊で、ハッピーエンドバッドエンドの他に、全員攻略しないと行けないトゥルーエンドが存在していた。
カイウスは他の攻略キャラクターとは違い、魔術が使える最強のキャラクターだった。
魔法がない世界で、カイウスは伝説の存在とされている精霊の加護を受けていた。
神から与えられた力だとカイウスを崇める人達が大勢いた。
精霊の加護は良い事ばかりではなく、時にはカイウスの身体を蝕む事があった。
目の前で苦しむカイウスを助けたいと願う、マリーの言葉を聞き入れた精霊王はマリーと契約を結び、カイウスがもしも精霊の力に呑み込まれそうになったらカイウスを助けられる唯一の巫女になった。
それが契約の巫女というゲームタイトルの話と繋がる。
カイウスはどんなに周りから持ち上げられたり、崇められても魔力に頼ってばかりではなかった。
剣の達人で、魔法がなくてもカイウスはとても強いキャラクターだった。
冷淡な見た目で無表情だからか誤解されやすいが、いいところもいっぱいあった。
優しくて強くて、男らしいカイウスが攻略キャラクターの中で一番好きだった。
あくまでも男として、憧れるという意味で惹かれていた。
ゲームのキャラクターなんだけど、ほとんどのルートを終えてそう感じていた。
妹も「カイ様は人気投票一位の大人気キャラクターなんだよ!」と鼻息荒くして興奮した様子で話してくれた。
カイ様とは、ファンの間での愛称だった…ゲーム内でもマリーや他の親しいキャラクターにカイと呼ばれていた。
後はカイウスのトゥルーエンドだけが残されていた。
妹にその事を話すと「カイ様のトゥルーエンドは超泣ける!」と言っていた。
ハッピーエンドもいい話だったけど、もっと上なのか、楽しみだな。
妹が見舞いに来る時はゲームの話で盛り上がっていた。
俺は未だに退院する気配がなく、17歳の誕生日を迎えたある日の事だった。
「うっ、ぐっ……はぁはぁ」
月日を重ねると息が苦しくなる時間が長くなっていき、おさまりにくくなっていった。
ベッドに爪を立ててシーツを握りしめて、痛みに耐えていた。
ベッドの枕元付近に置かれたナースコールに手を伸ばして、強く握りしめた。
すぐに医師達が駆けつけてくる足音は聞こえたが、見る余裕はなかった。
無機質な電子音が耳にこびりついて離れそうにない。
まだ昼間でカーテンの向こう側から射し込む光がだんだんと失われていった。
視界も狭まり、ゆっくりゆっくりと目の前が真っ暗になった……これが死ぬという事なのだろう。
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