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それからというもの、木場はシフトが一緒になる度に俺へ野菜や弁当を買い与えた。
最初の内は、お世話になっているから、顔色がよくないからなどという口実めいたものがそこに添えられていたが、俺がそれに対しての適切な返答を持たない事に気が付くと、そうする事が当たり前のように袋を差し出すようになった。俺は毎回不本意に腹を膨らまされるのも癪だと思い、それに合わせた量の買い物をするようになった。
また、ある時などついでだからと手製の弁当を作ってきた。明くる日空になった弁当箱を洗って返すと、木場は満面の笑みを浮かべて「ありがとう」と口にした。何故その言葉を自分が投げ掛けられたのかを疑問に思い、スマホを使って言葉の意味を調べたりもしたが、ディスプレイに映し出されたのはやはり知っている通りの意味であり、結局俺がその答えを知り得る事はなかった。
そうして俺のいつもの日々は、いつもの日々であるままで変化していった。
やがて仕事終わりに二人で牛丼屋などへ繰り出すようになり、昼間に会うようになり、一緒に暮らすようになっている事にふとした瞬間に気がついて、驚き動揺した。
俺はその間、正気を失っていたというわけではない。しかしいくら思い返そうと、この変化の切っ掛けすらも掴む事は出来ないのだった。
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