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 煙草が無くなってしまった事を理由に店を出てきたが、休日、他にやる事など思い浮かばなかった。  とはいえ再び外へ出るのも億劫で、机に立て掛けたスマホ。再生されている動画を見るともなく見ながら、麻薬中毒者のように煙草をふかした。  こんな生活を始めて、もう三年になる。  高校を卒業した後、家を離れたい、社会に出たいという理由だけでこの街の会社に就職したが、二週間もしない内に面倒になり退社した。それからはコンビニのアルバイトで、どうにか食いつないでいけるだけの金を稼ぐ生活。そのぬるま湯が心地よく、今では次の就職先を探す事もしなくなっている。  不安や焦りを感じないわけではない。寧ろそれに押し潰され叫びだしたくなる時も、眠れない日々が続く事もある。  それなのに何故動こうとしないのかが、自分でも分からなかった。どうにかせねばと頭で思っていても、体はこの場所にしがみつこうとする。  だから極力、考えるのを避けるようになってしまった。どうにも出来ない事で自分を苦しめ続けるようなマゾヒストに、俺はなれない。  動画を見るのに飽きてゲームを始めたが、それも十分もしない内に面倒になり、止めてしまった。  こんな時思いつくのは結局一つだけ。時間をかけて今の気分に合うものを吟味した結果、これだと決めたのは、昨日、新しくバイトにはいった女に似た女優の作品で、画面上で繰り広げられるその偽物の行為に、俺は不必要な自分の欲求を解き放った。
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