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 嫌みな女だ。  進学もせず、かといって定職に就いているわけでもない。ただ漫然とアルバイト生活を続ける二十一歳。同じ歳のそんな男を、こういう洒落っ気のある女が良いように思うはずがなかった。  大方、こんなふうに体よく接しておけば、新しいバイト先でも快適にやっていけると思っているのだろう。こういう女は、ずっとそうやって生きてきたに違いない。そうしてこれからも、何もかもが自分の思い通りなるものだと思い込んで生きているのだ。  或いはこうして俺の最も柔らかいところを遠回しに刺激して、自分の嗜虐心を満たしているのではあるまいか。だとすれば、とんだ痴女もいたものだ。  一度客足が途絶えればその後の業務は、随分と楽になる。そうすれば俺も徹底して機械である事ができる。  ポツポツと来る客をレジで応対し、合間を見て商品の補充を行う。  女の存在がエラー要因であったが、その容姿が優れているせいもあるだろう。篠田のオッサンが妙に張り切って指導は任せろなどと言ってきたから、こちらとしては好都合だと、哀れな独身中年男にその役を譲ってやる事にした。  あんなオヤジの指導では、覚えられるものもろくに覚える事が出来ないだろう。何でもできると思い込んでいるようなあの女には、丁度いい指導員だ。  女の態度は相変わらずで、篠田の話す鳥肌ものの過去の自慢話に、「えぇ! すごい」などと相槌を繰り返し、オヤジの方はそれでデレデレと鼻の下を伸ばす。その様子はまるでどちらの方が滑稽であるかを競いあっているようで、嘲笑が漏れた。
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