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 薄い剃刀の上を歩くような不安定な気持ちのまま家へ戻ると、二つの袋の中身をテーブルの上に取り出した。  カップ麺とおにぎり。パックに入った野菜。牛乳。しょうが焼き弁当。一見して一食分には多すぎると分かる量であったが、何故だか日を分けて食べる気にはなれず、全ての調理を纏めて行い、といってもカップ麺に沸かしたお湯を注ぎ入れ弁当をレンジで暖めただけなのだが、それを一遍に食した。  案の定、腹が一杯で動けなくなる。食後の一服は大抵旨く感じるものだが、満腹だとその楽しみは薄れる。それでも習慣的に煙草を吹かしながらあの木場という女の事を考えた。  無配慮にキラキラしたものを振り撒いて、いけ好かない女。あんな奴は無駄に活気のある居酒屋や、小洒落たブティックなんかで働けばいいものを、何故コンビニのアルバイトなのだ。  どうせ腹の中では、俺や篠田のオッサンの事を見下し、大学の友人などにはキモいだの何だのと触れ回るのだろう。  今に友人達が店を冷やかしにやって来るに違いない。その時が来た事を考えて笑みを湛えた。奴らが望むままの道化を演じてやればいい。そうして奴らは、俺の思い通りになっている事に気付かぬまま、俺を嘲り、精神を腐らせていくのだ。
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