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 目の前でくるくる回る三つの数字が、左から順番に止まっていく。6、6、5。と、止まった瞬間に、右手を台へ叩きつけそうになり、それをグッと堪えた。  ハンドルの下に置いてあった煙草の箱を手に取り、蓋を開くと中身は空。苛立ちを隠そうとせずに舌を鳴らすと、箱をクシャリと握り潰す。  体の中の空気を全て吐き出すかのようなため息を吐き、再びハンドルを回し始めた。ガラス板の向こう側。弾かれて転がり落ちてく銀玉。始まった期待度の薄いリーチに、体を流れる液体が冷たく黒くなっていく。  右足は揺れる。全身を震わせるかの勢いで、揺れ続ける。  耳に届くようになってしまった騒音が、頭痛を運んで来た。薄暗い路地裏で悪事を働くような、重たく鈍い痛みだ。  頭痛を遠ざけるため、目の前で転がる銀玉や知らないアニメキャラクターが映る液晶に意識を向ける。十秒もしないうちに苛立ちがやって来て、握った拳でバンバンと太股を叩いた。そうでもしなければ叫び出してしまいそうだったからだが、それも効力は薄く、とうとう我慢の限界がやって来て、残り僅かとなった持ち玉を使いきる事もないままに店を後にする。煙草が必要だった。  外へ出ると空はまだ青色をしていて、それが一層気持ちを憂鬱にさせた。  駐輪場に停めておいた自転車に乗り込み、並び立つ商業施設に挟まれた片側二車線道路を走りだす。  横を走り抜けていく車の列。喧騒が風のように流れる。俺にはまるで関心のない世界。それなのにやたらと干渉してくるのが、腹立たしい。
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