第3章

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 冷静に限りなく優しさを全面にだしながらも、目元は決して穏やかには見えなかった。  専務室の秘書の近藤マエは、自ずと雄大の視界を遮るように、前髪をかき分けたり、髪の毛を必要以上に気に掛けながら手櫛で弄っている。  社長室の秘書のあだ名は「う局様」と言う秘書達には目上のたんこぶの存在感である、村上冴子が先程来から腕組みを組みながら、一見横柄に見えた。  『私には関係ないこと! 何とでも言いなさい、東梅さん』  そんな気持の表れが態度に滲み出ていた。  雄大は冴子を社長室の秘書にした人材ミスは大きいと思いながら話を続けた。  「概要は先程から伝えた通りですので、これからは個別に話の聴き取りをしたいとおもいます。 先ず今日から三名づつです。 明日は人数も同じく聞き取り致します。 非公開ですので書面に各自の日時を記載しておりますので、ご協力の程宜しくお願いします。 この様な漏洩問題に関わっていないことを願うばかりです。 では時間差での対応となります。 時間は変則的ですのでシッカリとご自分の日時を確認の上で、場所は聞き取り調査室を設けております、総務部の脇に一部屋外部からの応対室で行われます。 宜しいですか? では今日はこれで終えますので、各自仕事に取り掛かって下さい」  全ての秘書達は渡されたレポート用紙にパソコンで打たれた文字を真剣に見ていた。  雄大の話しを聞くときよりも、神妙な顔で暗さのある顔付きをしている。  雄大の応対の態度や、言葉に壮大は敬意を払った。  「ご苦労様でした。 これからが大変ですね。 宜しくお願いします」  兄弟とは言え、会社内では役職もさることながら、とかく日本のサラリーマンは、特に企業側が求めている高学歴が左右する中で必然的に上下関係が生まれるのだろう。  一卵性双生児ではあるが、雄大は国立T大、壮大は私立のH大卒業なのだ。  壮大は小さいときから雄大の能力を認め自慢さえしていた。  それは今でも変わりがないようだ。  
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