第3章

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 マエは洗面室に向かい鏡に顔を近付けてみた。  化粧の崩れを見たわけでは無かった。  強張った顔がどの程度までなっているのか?  やはりいつもの顔では無かった。  雄大や壮大は何度も顔を見ていたのが気になっていた。  咄嗟に二人からの視線をそらしてしまっていた。  私だけが知り得た情報の元で、九条への復讐を実行したまでである。  九条への気持は遊びの付き合いとは思ってはいなかった。  九条はきっとマエとの付き合いは結婚など考えるような事では無いと実感していたことが分かるだけに嫉妬や制裁を下したかった。  その手段が復讐劇になったとは、その時点で気付かずにいた。  愚かな選択肢である。  九条を巻き込んで憎む対象が、企画実案化したすずにも責任の一貫が在ると、会社から問い詰められて潰したかったのだ。  理由は浅はかな嫉妬で在る。  九条がマエとも社長から声を掛けられた会社の令嬢の結婚話も断ってまでも、同じ部署で仕事を為ている、社員のすずを好きだと言ったことが切っ掛けであった。  すずは九条の気持など知るよりも無い。  その振りなど微塵も感じられないほど、淡々と仲間として同じ部署で働いている事がすずには恋心を見せないのだろう。  九条は一目惚れだとマエの気持など考えずに笑いながら言ったという。  その言葉を素知らぬ顔で聞かない振りをしていたが、プライドが傷ついた事で、今回の事件が解決を見出した後で分かったのだ。  颯爽と歩くマエの向こう側に一目で分かる愛する人が見えた。  近付いてきて声を掛けてきた。  「今日は秘書の研修会かい? 如何だった? 疲れただろうね」  研修で今回の事件を壮大の参加で行われることを事前に聞いていたのだ。  この九条の中途半端な優しさに三年間一喜一憂してきた。  それでも憎めない愛も在るのだ。  「そぉ、疲れ気味かなぁ? 今晩会ってくれるかしら」  「今日はダメなんだよ、残業になるかも知れない」  メラメラと嫉妬心が剥き出しになっていた。  「そぉ、じゃぁ、同じ部署の皆もご一緒なのね、あの気位の高いあの子もご一緒?」  「君はおかしいよぉ、あの子は気位など高くないよ。 素直で普通の子だよ。 でも知能は凄いと思うけど」  いけしゃあしゃあとして、笑いながら言う九条の顔は幸せそうに見えた。  この場から早くて立ち去りたかった。  惨めな気持ちに負けていた。  
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