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すず達の仕事は残業までになっていた。
当然、社員はその様になることを予想はしていた。
お腹の空いている事が、村田達に知れてしまった。
「キュー グーゥ」
生理現象だとは言え、流石のすずも言い訳が出来ない。
「スミマセン!! なんかお腹が空いていて、聞こえましたよね」
三人は顔を見合わせて大笑いである。
「ソロソロ仕事を終えましょうか? 暫くぶりで食事を一緒にしませんか」
九条がいち早く子どもの様に笑いながら手を上げた。
「そうしましょうか? どんですか、皆さんは」
「そうですよね、加藤さんと同じくらい、お腹が空きましたよ。 どう? 加藤さんもごいっしませんか」
回りの部署は勤務を終え室内から感じるほど静寂であった。
「トントン」
ドアをノックする音で一声にドア方向に視線がいった。
「どうぞ、お入り下さい」
村田はドアを叩く方向に声を掛けていた。
(まさか、専務が心配で来たのかしら! いやぁーあの社長なら突然連絡無しに来ることも有り得る仕事人間と聞いている)
誰も予想しない来客に、今から仕事を終えて帰ろうとしていた事に、水を差すように思えていた。
「東梅です。 入ります」
えぇ??!
雄大の顔が目の前に現れた。
「残業なんですね、僕も今終えて帰ろうと会社を何気に見上げたら、こちらの明かりが煌々と窓ガラスから見えまして、戻って来たと言うことです。 今日は色々と有難う御座います」
真っ直ぐに背筋を伸ばした長身の姿に、すずはホンノリと頬をそめていた。
壮大はすずの顔を眺めていた。
(嬉しそうな加藤の顔)
「今仕事を終えまして、食事に皆で行こうと相談していたんですよ。 どうですか? 東梅さんもご一緒に如何ですか」
壮大が思い付いたように笑いながら言った。
「俺たちは行くと決めてましたよ、でも加藤さんの返事は未だなんですよ、加藤さんもどうですか?」
(行きますと言おうとしたときに先輩が来たので言い忘れてしまって。 なんか先輩が行くから私も行きますとは言いにくいわ)
素直にスッキリと言えば良いことなのに、すずらしくないと思うほどモジモジ為ていると、九条は思えた。
「皆さんで行くのに僕は外野ですので気持だけでも有難う御座います」
「行きましょうよ、と、う、ば、い、さん!」
ニヤニヤしながら意味ありげに笑う壮大を村田は注意した。
「樋口君、そんな言い方をすると行く人も行けなくてなります。 どうぞ、行きましょう。 加藤さんも、ね? こないだみたいにお酒を精一杯呑んでも良いんです。 酔った加藤さんも可愛いですよ」
立つ瀬がない。
好きな人の前でこの様に言われたら身も蓋もない。
「こないだのような失態はしませんので、食事だけでもご一緒させて貰います。 明日はお休みですので。 宜しくお願いします」
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