前編「エイプリルフール」

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     夕方。  部室(ボックス)での作業が終わり、誠一は帰宅する。  アパートの三階に住んでいるのだが、そのアパートが見えてきたところで、ちょっとした異変に気が付く。 「あれ? 俺、電気消すの忘れたか?」  誠一の部屋の窓から、明かりが漏れているのだ。  それこそ飯田への冗談にあった同棲生活が事実ならば、部屋の電気がついているのは、不思議でもなんでもない。同棲相手が先に帰っている、ということだ。  しかし誠一は一人暮らしの大学生であり、同居人などいない。 「まさか、泥棒? いや泥棒なら、電気なんて消したまま、盗みを行うはず……」  とりあえず、急いで階段を駆け()がり、ガチャリとドアを開ける。  すると、部屋に入ってすぐのところに、人影があった。 「おかえりなさい」  一人の女性が、三つ指ついて正座したまま、誠一の帰宅を待っていたのだ。    
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