小さな荷物

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 ここに来た当初は、知らない人と接することが怖かった。祖母にも迷惑をかけて申し訳ないという気持ちで一杯だった。成人しても自立できず、家族に負担をかけていることに引け目を感じて、己の情けなさに涙が出そうだった。  でも、八十を過ぎてなお先生として教室を開く祖母、無邪気な子どもたち、さっぱりしていて押し付けがましくない親切さを持つご近所さんと接するうちに、人間はそう悪くないものじゃないかと思うようになった。  手伝いをすると喜んでもらえる。祖母にも生徒さんにもありがとうと言ってもらえる。大したことは出来ていないから初めは戸惑ったし今でもなんだかくすぐったいけれど、嬉しい。  仕事を辞めてここに来るよう勧めてくれた両親や、何も言わず受け入れてくれた祖母。  穏やかな、ちょっとしたことで温かい気持ちになれる生活。  本当に大切なもの、守りたいものを、思い出した。  目標が、できた。  小さな段ボールしか必要なかった私の荷物は、少しずつ増えそうだ。
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