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終わりのはじまり
「もう別れよう」
それは突然のことだった。
27になった私は、勝手にもうこの人と結婚するのだと思っていた。そんな矢先に、電話で切り出された話だった。
「どうしてそんな突然」
すがるような自分の言葉に嫌気が差しながらも問いかけると、彼は黙ってしまった。
「本当にごめん」
それが彼の最後の言葉だった。
・・・
・・・
私と彼は付き合って3年。
地元が同じで、私よりも3歳年上で、飲食店を営んでいる。
私の転勤で遠距離になり、1年がすぎようとしていた最中だった。
両親への紹介も無事に終え、そろそろ時期を見てプロポーズを待ち構えていた私にとってこの状況は、あまりにも信じがたい現実だった。
電話を切った後、私はひとしきり泣いた。
3年分と、その先を考えていた分と、いつの間にかすれ違っていた互いの温度差に、悲しみは止まらなかった。
当たり前のように感じていた日々は、
こんなにもあっけなく終わる。
明日から何を希望に生きていけばいいのだろう。
あまりにも大きかった存在が、
今日から他人になってしまった。
電気もつけないまま、まっくらな部屋で私は夜が更けていくまで泣き続けた。
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