腕のいいマッサージ師です

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 ふうっと息を大きく吸い込んだ。急に瞼が開き目の前が明るくなった。 意識が戻った、と思った。 最後の記憶は、脚立の上の体が斜めに落ちていく動きと驚き。 結果が出る前にすべてが停止した、というところで記憶が途切れていた。 今、目が開き肺が膨らんだと感じられたという事は、 怪我でもしたであろう俺の意識が回復したんだ。 ・・ああ、よかった。生きているんだ・・ きっと親父やお袋や兄貴が、ベッドに横たわる俺を見下ろして 安どの涙を流しているに違いない。すすり泣く声が聞こえているから。 「ごめんよ、心配かけて」 そう声を発したつもりだった。だが何の反応も返ってこない。 誰も俺の声に気付いていない。 「かあさん・・聞こえないのか?父さん・・おい、兄貴・・おい・・え?」 次第に泣き声が大きくなる。なんだよ、みんな気づかないのか? 俺、目を覚ましたんだぞ。 まだ体は動かないと思ったが、試しに腕を上げてみた。 すると上半身が腕の動きに合わせるかのように起き上がることができた。 でも、何かおかしい。起き上がったのに、なぜか高い所から下を見下ろしているように見える。例えるなら、天井から下を見下ろしている感じ。 ・・どうなってんだ?それにこの状況って・・ 眼下に広がるのは・・病院の部屋? パイプのベッド全体が白い布に覆われている。誰か寝ているようだ。 顔が出ている。どこかで見たような顔・・ あっ!俺じゃないか!俺だよ、寝てるのは。
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