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「真樹生ぉ・・真樹生!起きなさい!なんで・・
なんで死んじゃうのよぉ・・・」
お袋が白い布をつかんでゆさゆさとベッドを揺らしている。
その声は狂気じみていて、俺の知っているお袋の声とは似ても似つかない。
「せっかくいいとこに住めるようになったのに・・なんでだよ!」
兄貴が壁を叩いている。親父は俺の足元に立ち尽くし、
黙って肩を震わせている。
どうやら俺は・・死んでしまったようだ。
一つご褒美をもらって、いよいよ次は夢を叶える体制に入った27歳で、
三ツ橋真樹生という男の生涯は終わってしまった。こんなことになるなんて。こんなことになるならもっと早く、ご褒美を省いて店を出しておけばよかった。海外旅行にも行ってみたかったし、結構モテモテだったんだから、
嫁さん候補も選んでおけばよかった。やりたい事、いっぱいあったのに・・いっぱいあったのに・・
体の中から悔しさと悲しさがこみあげてくる。大声張り上げて泣きたい。
涙が枯れるまで泣きたい、と心を揺さぶっているのだが、涙が出てこない。
もう・・涙が出てこない。当然かもしれない。
脈も打たないし呼吸もしないんだから、涙が体内で作られることはないんだ。
もう俺の体はなにも・・生み出さない・・・
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