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一人目の同居人
ドアが開くとすぐ、スリッパの乾いた足音が二つ聞こえてきた。
どちらも乾いているけれど、一つは重々しく粗っぽい足音だ。
それもそのはず。その足音の主は、体が大きいだけじゃなくわざと体を揺らして威厳を表している、ちょっとやくざ風な男だった。もう一人は・・見知った顔だ。
「おー!いいじゃん!シャレた部屋じゃねえか」
すぐさま窓に近寄りベランダへ出る。眼下に広がる景色を眺める横顔は、さっきまでの粗暴な雰囲気は消え、柔らかな風に微笑むかのように穏やかな表情になっていた。
「へぇ、こんな高そうな部屋なのに家賃ほんとにこんな安いのかよ?」
部屋の真ん中に静かにたたずんでいる不動産屋は、少し眉をこわばらせた。
「はい・・家賃はこの周辺の同レベルの物件よりかなりお安いです」
「だよな?よその不動産屋も見たんだけどよぉ、この広さと築年数だったら
10万は軽く超えてたぜ」
男は部屋の中を歩き回りながらキッチンやクローゼット、浴室と別になっているトイレなど、ドアというドアを片っ端から開けて見ていた。それが済むと、ロフトへ続く階段に腰を掛けて天井を見上げた。そしてなぜか、こちらを見つめて首を傾げた。が、すぐに不動産屋に視線を戻した。
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