一人目の同居人

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「これだけの部屋で家賃6万4千円?ほんとにいいのか?  なんか訳でもあるのか?」 すぐにそこに結び付けてくれたことを不動産屋はありがたく思ったのか、 ホッとした表情を浮かべながら口火を切った。 「実は物件情報の備考欄にお示ししてあるように、告知事項がありまして」 「告知事項?なんだそりゃ?」 「実は・・その・・この部屋はいわゆる事故物件なんです」 事故物件。その言葉に男の頬は一瞬ピクリと痙攣した。無理もない。 その意味は簡単に想像できる。もはや誰でも知っている言葉なのだから。  大きな体を少し縮めていた男だったが、すぐにさっきまでのデカい態度を取り戻し、裏返り気味の声で事故物件になった理由を訊ねた。 「前の借主様が部屋の模様替えをしようとして脚立から落ちてしまい、  結果亡くなってしまったという、まさしく事故だったんです。  ですが理由はどうあれ、人が亡くなってしまった直後にお貸しする  のですから、お知らせするのが義務だと私どもは考えております」 いくら事故だったとはいえ、人が死んだとわかったうえでこの部屋を借りるのは勇気がいるだろう。怖くないはずはないと普通だったらそう考える。さてこの男はどうするだろうかと成り行きを見守っていると、男は座っていた階段から降り、不動産屋にこう言った。 「了解!すべて了解、で、この部屋に決めたぜ。手続き頼むな、にいちゃん」 どうやら次の住人が決まるようだ。あの粗暴な感じの大柄男との同居生活がうまくいくことを祈りながら、二人が帰って静まり返った部屋の床に降りてきて、大の字に体を伸ばした。
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