癒しの手

一人目の同居人

　岩尾信二、３１歳。この風体で職業はなんとホストだっていうから驚きだ。
ホストといったら細身で軟弱なスタイルってのが俺のイメージだったが、岩尾という男に激しくぶっ壊された気がしてならない。身長は俺と同じくらいだから１７５センチくらいか。だけど体格がガッシリしているから大柄に見えるんだな。別に太っているわけではない。
筋肉質って言ったらわかりやすいだろうか。
源氏名は「雅（みやび）」なんてつけてるけど、とてもそんな優雅な雰囲気ではない。動きがいちいちガサツな感じがする。俺も客商売だったからわかるけど、接客態度もこんな感じだったら、俺は・・ちっとも癒されない、と思う。

　信二の引っ越しを手伝いに来た者は誰もいなかった。自分の車で何度も往復して荷物を運び入れていた。こいつの雰囲気から、先輩面して店の後輩あたりに手伝わせるんじゃないかと思っていたが、ひたすら一人で運び入れを繰り返し、４回目でやっと、作業を完了させていた。
　折り畳みのベッドにマットレスを引き終わると、しばしの休憩とばかりにベッドに倒れこんで体を伸ばしていた。
「あ～今日からここが俺の城だぁ」
そうつぶやいた時の信二の顔、どことなくあどけなさがにじんでいた。