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俺はカウチからむくっと起き上がって信二の背後に回った。
こいつの肩をもみほぐしてやろう。話し相手に慣れない俺には心をほぐすのは難しいけど、体をほぐすことなら任しておけ。
久しぶりに凝り固まった肩に手をかける。しばらく忘れていた手の動きが、徐々にスムーズになっていくのが嬉しかった。
だが、急に信二が背筋を伸ばした。そして右手を左肩にかけ、そろりそろりとさすってから首を左右に傾けたり回したりし出した。
どうしたんだ?いったい・・
「なんだよ・・急に肩が重くなったぞ・・なんか背筋もぞわっとする・・」
なぜか信二は怯えた目であたりをきょろきょろ見回した。
何探しているんだよ、とヤツの顔の前に自分の顔を突き出してみた。
目が合った。信二は分かってないと思うんだけど、目が合った瞬間身震いしたところを見ると、何か感じ取ったらしい。霊感は無い体質だとリサーチ済みなんだが、気配のようなものは感じるみたいだ。
「きっと疲れてんだ、さっさと寝るとするか」
自分に言い聞かせて信二はベッドにもぐりこんだ。灯りはつけたまま、すっぽりと布団をかぶって、態度のデカい体を小さく丸めて眠りについた。
・・おつかれ、今度はもっと念入りに揉みほぐしてやるからな・・
俺の未練である、癒しの施術。これがまず一つ。そしてもう一つある未練、
それは、せっかく気に入ったこの部屋にもう少し住みたいということ。
気が済むまで、ここにいたい。
たとえ地縛霊と言われようとも、この世への未練が断ち切れるまでこの部屋に居候させてもらう。そのお礼なんだから、多少の悪寒は我慢してもらおう・・
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