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部屋に帰って信二に戻った雅の疲れ切った背中は、俺のプロ根性を十分刺激した。1時間くらいの時間をかけて揉みほぐせばかなり体は楽になるはずだ。それに今夜は、施術だけじゃなくあることも試してみたい。
直接声をかけてやりたいのだ。ありきたりな言葉しか出てこないのは分かっているが、それでも誰かが自分を思って言葉をかけてくれれば気持ちも多少は和らぐ。ソファに浅く腰掛け体を折り曲げるようにしてうなだれる信二の肩に手をかけた。いつもなら手をかけるとすぐにビクッと体を起こすのだが、今夜はのっそりとした動きで顔をあげた。よし、励ましの言葉をかけてやるか・・
「元気出せよ。たまには失敗くらいするだろ、誰だって」
その瞬間、信二は素早い動きでソファから立ち上がった。顔からは血の気が引いている。
「・・今なんか聞こえたぞ・・なんだよ今のは」
上半身を右へ左へと半回転させながら姿の見えない俺を探している。
「いいから気にしない気にしない。ほら座れよ、たっぷり揉みほぐしてやるから」
さらに俺は施術を続ける。背骨に沿って親指を滑らせれば、きっと痛気持ちよくて間抜けなうなり声をあげる、はずなんだが・・
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