一人目の同居人

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なんとも寂し気な声で妹の美樹はつぶやくように問いかけた。 雅こと信二は、一瞬躊躇いの色を見せたがすぐにそれを吹き飛ばし、 「そりゃ楽しいぜ!なんたって金稼げるしな」と豪快に笑って見せた。 「そっか・・でもたまには家に帰っておいでよ。父ちゃんも母ちゃんもお盆や  正月になるといつ帰って来るかいつ帰って来るかとソワソワして待ってるんだよ」 妹は、そう言うとさりげなく兄に背を向けた。俺は妹の顔をのぞきに動く。 クリッとした瞳には小さな光の粒が見えた。泣いてるんだ・・ この二人の年齢からすると両親もそこそこ老いているはずだ。今は漁に出られる体でもいつ体調を崩して仕事ができなくなるかわからない。歳を重ねて持つ不安を都会で働く息子に解消してほしい。できれば家に戻ってきてほしい。そう淡い希望を抱く両親の思いを伝えに妹・美樹は久しぶりに兄を訪ねてきたのではないか。心の声を読み取った俺は、信二に語り掛けてみる。 ・・家族みんながお前の帰りを待ってるんだぞ。都会の、ホストの仕事にも限界感じてるんだろ?だったらこの辺で故郷に戻ったらどうだ?・・ 「えっ?」 信二の顔に怯えの表情が広がる。またもや血の気の引いた顔であたりを見回した。 「お兄ちゃん、どうかしたの?」 美樹は突然の兄の様子に不思議そうに眉根を寄せた。 「いや、なんでもない・・そうだな、たまには里帰りするかな」 さらに俺は援護射撃的に語り掛ける。そうだそうだ、里帰りしろ、と。 すると信二は何度も何度も肯きを繰り返す仕草を見せた。まるで俺の言葉に答えるかのように。
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