二人目の同居人

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独身だからね、なんて職場や世間では言われちゃうんだろうな。そういう客、サロンでもいたっけ。たまに担当になると愚痴を言っていた。 周囲の目と言葉に時々イライラするって。 「独身だと気楽でいいでしょ?お金も自由に使えるし、羨ましいわ、なんて言ってるけど心の中じゃ憐れんでんのよ。ほんと、女って質が悪いわ!」 施術中にもかかわらず突然むくっと上半身を起こしたりして。 立場が違う人間にとってはその気持ちを理解するのは難しい。でも不愉快に思っている事だけは解る。怒りながらも寂しさがにじんでいるのが見て取れたから。 きっとこのおばさん、いやとし子も同じなのかもしれない。 ブランド物で心の隙間を埋め、優雅な生活を送ることで 自身の心の内を守っているのだとしたら。 ・・施術しがいがあるだろうな。きっと俺が体をほぐしてやるからな・・ 新たな決意をもって年上の同居人の肩に手をかけた。 早速重さを感じたようで、肩に手をかけるとし子。 「あ~やっぱ年取るとすぐ疲れるのよねぇ。明日マッサージ行こうかしら」 首を回すとし子に正面から語り掛ける。 ・・だから、俺がタダでやってやるから・・ せっかく俺が好意を示してやったのに、とし子はバッグの中からデカい財布を取り出し、束になって出てきたポイントカードの中から 整骨院やらリラクゼーションサロンやらのカードを床に並べていた。
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