腕のいいマッサージ師です

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「俺の月給で審査通りますか?」 無機質さがオシャレ感を誘うデザイナーズマンションの部屋の真ん中で、物件案内してくれた不動産屋のにいちゃんに不安げな声で聞いてみる。 俺と歳の近そうなにいちゃんは、大丈夫だと思います、と小刻みに肯いた。 憧れのおしゃれマンション。1LDKに階段付きのロフトがある。 ベランダは隣の部屋と並ばない単独の作り。 少し広いからテーブルとか椅子とか置いて優雅にビールでも飲もう。 ちっぽけな夢だな、と自分を笑ってみる。 でもすべてはこういうちっぽけなところから始まっていくんだ。 まずは住まいから、だけど、俺のちっぽけはいつか必ず大きなものになる。 契約書を手に不動産屋のドアを開けた時に見た真っ青な空の色を、 将来の俺の店の扉の色にしようと心に決めた。
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