癒しの手

腕のいいマッサージ師です

　デザイナーズマンションに住んでから２ヶ月が経った。
友達を呼んで自慢の部屋を見せた後、駅のそばにある評判の焼鳥屋に飲みに行った。店の存在は引っ越してきた時から知ってはいたが、焼鳥屋といっても赤ちょうちんではなく、格子の引き戸がやけに高級感を醸し出していて、一人で入るのは躊躇われた。そこで友達を誘って中を偵察してみようと考えた。
　カラカラと軽い音を立てる引き戸の奥には、淡いオレンジの灯りに包まれる上品な空間が広がっていた。
「すげえオシャレじゃん」
引き戸を開けたまま突っ立ってしまった俺たちは、店員に案内されながら
ぬいていたジャンパーの襟を思わず正した。
　酒も焼鳥も美味しくて気に入った。そして俺がさらに気に入ったのが電気、灯りだった。
電気の傘っていうのか？ああ、ランプシェードっていうのか。あれがオシャレでいいなと思った。細い木を編んであるように見える。アジア風な感じ。
俺の部屋に似た無機質な雰囲気のこの店にしっくりとなじんでいるんだから、きっと俺の部屋にも合うんじゃないか。
お代わりのビールを注文する時に思い切って店の人に聞いてみた。
すると店のオーナー自らビールを持ってきて、初の客である俺たちに快く
インテリアの出所を教えてくれた。
「こういう店舗用のインテリアも豊富にある店なんですよ。
　もちろん普通の住宅用もね」
そういいながらメモ用紙に店の名前と場所を書いてくれた。