71人が本棚に入れています
本棚に追加
「起きて、ヒメちゃん!」イチが横から声をかけています。
「ゴメンね、って言ってくれたら起きてもいいよ」
片目を開けてヒメはそう言ってしまってから、すぐに後悔しました。いつものクセで、ふざけてしまったのです。寝たふりをして、イチに勝ちを譲るという作戦だったのに、大失敗です。
「えーっ、どうして僕が謝らないといけないのさ」
イチも言ってすぐに後悔しました。これでどちらもごめんねが言い出せなってしまい、ヒメとイチは気まずく黙り込むしかありませんでした。
子犬は二匹の間を行ったり来たりしながら、ヒメとイチの顔を交互にのぞき込みました。そして何往復目かしたとき、「キャン」と鳴いて、尻もちをつきました。
「どうしたの?」
子犬のかん高い鳴き声に驚いて、ヒメちゃんが飛び起きて聞きました。そして、「あなたは誰?」と、寝たふりをしていたときから気になっていることも聞いてみました。
子犬はお尻を地面に付けて、体を斜めにして座り、後ろ足をペロペロ舐めました。
「トゲを踏んでしまったみたい」と言って、顔をしかめました。
それから「私はステラ。星っていう意味なの。素敵でしょ? 私のご主人がつけてくれたのよ!」と自己紹介しました。
「ご主人?」
「ステラちゃん、飼い主のご主人がいるの?」
「そうよ!」とステラは嬉しそうに跳ねました。しかし棘の刺さった足を地面に着いてしまって、「イタタッ」と、すぐにまた地面におしりを落としました。
最初のコメントを投稿しよう!