うさぎとカメとステラ

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 「ワンワンッ!」  ステラはイチの背中からあっという間に飛び降りると、すごい速さで背の高い男の人に駆けよりました。そして後ろ足で立って男の人の足に前足をかけました。  「おや? ステラ、どうしたの? 怪我でもしたのかい?」  男の人が聞きました。ステラが後ろ足を片方上げているのに、すぐに気が付いたのです。ひょいと抱き上げてステラの足を覗き込み、「おや、棘が刺さっている。早く家に帰って抜いてあげよう」と言いました。  そしてヒメとイチに目を向けると、「君たちがステラを連れてきてくれたんだね。大きな耳で聞いて、強い脚で運んでくれたのかい! 最強のコンビだね! ありがとう」  ステラもご主人の腕の中から「ねえ」とヒメとイチに呼びかけました。「あなた達は早く仲直りしなくっちゃ!」と言うと、ぺろぺろとご主人の頬っぺたを舐めました。  「私達の仲の良さにはかなわないでしょうけど、あなたたちもいい線いってると思うわよ!」と、いたずらな顔でウィンクして見せました。  ヒメとイチだって、仲良し勝負では負けられません。  「ケンカなんかしてないもん!」ヒメはピョンピョン飛び跳ねました。  「僕たちの方が、君たちよりも仲良しさ!」イチも首をぐいんと持ち上げました。  「それはともかく、ご主人の所まで連れてきてくれて、どうもありがとう!」  ステラはシッポをふりふり言いました。そして視線はちょっぴり離れ離れだったご主人にくぎづけ。もう何を言っても聞こえそうにありません。4088716f-65b7-4900-af95-086c36713726
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