都橋探偵事情『座視』

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「会長留守だから楽にして」  保谷野が会長の椅子に座った。徳田もソファーに座る。 「で、どう見つかりそう?」  保谷野が煙草を咥えると絶妙なタイミングで子分が火を点けた。連携の素早さに徳田は笑いそうになって堪えた。 「居場所は特定しました。左端に写っているのがどうやら男のようです」  徳田は二枚の写真をテーブルに載せた。 「姉さんもまあ、若い男と出来ちゃって、それも二枚目じゃねえか。親父も可哀そうによ」  保谷野は写真を見て笑った。三人の子分も釣られて笑うと「笑うな」と脅した。徳田が煙草を出しながらラークの底のスイッチを入れた。 「どうしましょうか?ここで御免か夫人を説得するか?」 「迷うなあ、この写真を見れば姉御から番掛けたのは間違いねえしな。男を袋にしてもいいけど、こいつらにやらせたら死んじゃうかもしれないしな、手加減知らねえからさ。笑ってんじゃねえよばか野郎。ところでこの二枚目仕事は何やってんの?」  子分は叱られると立ち姿勢を直す。 「ホストで役者です。どっちも売れていないから市場でアルバイトしながら生計を立てています」 「だからだ、親父が言ってた、最近金遣いが荒いって。姉御相当次ぎこんでるな。出来たらあんたから姉御にさ、諭してもらえると助かるなあ」 「やるだけはやりましょう」  保谷野は札入れから二十万を出した。前金と合わせて五十万になる。 「金庫の金使えないから俺自腹、これで勘弁してくれないかな」  交渉事はもう少し吹っ掛けてもいいが、捜し出すのに二日しか要していない。これぐらいでいいだろうと徳田は札をポケットに入れた。 「情欲は途中で遮るとぶり返しも激しい。保谷野さんそれでもいいですね」  保谷野は「うん」と頷いた。小声だがマイクは拾っているだろう。
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