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「課長、課長は一連の墜落災害のことをどう思われていますか?鶴見の墜落死、大津の墜落死、二人共僕がここでこの机で面接をしました。二人共身寄りのない還暦を過ぎた作業員でした。横山さんが声を掛けて連れ出してから一月足らずで二人共墜落死をしました。課長や部長はそのことを不思議には思わなかったんですか。僕はずっと不思議に思っていましたが言い出せなかった。自分のことだけを考えて座視していたんです。そしてまた横山さんに声を掛けられた作業員に吉崎工業を辞めるよう説得しましたが押し切られて諦めました。同罪なんですよ、僕等、横山さんや落とした男と」
ここまで話して平野は課長を見つめた。
「大津の専務から電話があった。首謀者横山と実行犯丸山両名は死んだ。社長は逮捕された。それにバックの吉崎組組長は意識不明のままらしい」
平野は展開に驚いた。自分達がカローラで逃げ切れた裏で、壮絶な何かが繰り広げられていた。逃がしてくれたブルーのワーゲンに乗った二人の探偵がいなければ自分達はどうなっていただろうか。想い出すと鳥肌が立った。
「課長はどうされるんですか?殺人と言う墜落死を事故死と誤魔化してこのまま会社に残って続けるつもりですか。僕は進んで法廷で証言するつもりです」
課長は頷いていた。
「いいさ、もうこの会社はやくざの冠から解かれた。君の好きにするがいいさ。膿を出し切ってもうこれ以上出て来ないと思ったらいつでも戻って来てくれないか。これは私の考えじゃない、恐らく後継を担うことになる専務の考えだ。それでずっと君を待っていろと言われたんだ。平野君、君みたいな男が必要なんだよ」
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