都橋探偵事情『座視』

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 平野はデスクの私物をバックに流し込んだ。引き出しも開けて全てバックにぶち込んだ。課長に一礼して事務所を出た。駐車場に行くとカローラの隣にシビックが停まっている。 「待ってたよ平野君、大きな声だからやり取り全部聞こえた。男だねえ平野君は」  大津作業所の監督である。ジープの運転をしていた男、危うく押し潰されるところだった。 「横山さんの車ですよね、どうしたんですか?」  平野は警戒した。 「横山は死んだ、相棒のギタも死んだ。あいつ等は労災ゴロだよ、一緒にして欲しくないな。俺もさ、自首するんだ。あいつ等の悪事暴いてやろうと思ってる。それでさ、どうせならあの探偵さんに告白して一緒に警察に自首するのがいいだろ。だから平野君は探偵さんの住所知ってるだろうから連れて行ってもらうために待ってたんだ。吉崎の追っ手に捕まる前に急ごうと思ってさ」  お人好しの平野はその気なった。 「分かりました。僕もそのつもりです。一緒に警察に行きましょう」  馬鹿な男だ。野本はシビックに乗るよう進めた。平野はバッグをカローラのトランクに投げ入れた。  大岡川の川縁福富町側にベンツが停まっている。トルコ風呂の受付が大阪ナンバーのベンツに近付いて来る。運転席の窓をノックする。中西は少しだけ窓を下ろした。 「お客さん?」  返事をしない。 「悪いけど車動かしてくれない、気になってさ」
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