気になる女の子

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 どうしてもぼくの視線は、彼女のほうへ吸い寄せられてしまう。 「えー、この『受く』というのは下二段活用で」  古典の真島先生が、しゃがれた声で説明しながら黒板に、け、け、く、くる、と書いていく。  ぼくの席は、まん中の列の、うしろから二番目。  彼女の席は、左隣の列の、ぼくから三つ前。  黒板を見ていたはずのぼくの目は、気がつくと、彼女のうしろ姿を向いているのだった。  肩まである黒いつやつやした髪をゆらして、彼女は熱心にノートを取っている。  彼女の名前は、軽見(かるみ)ひうら。  梅雨時に他県から転校してきて、ぼくら二年B組の一員となった。ちょっとばかりツンとした感じの美少女だ。ときおり浮かべる謎めいた微笑みに、クラクラまいってしまう男子は多い。  ぼくにとっても気になる女の子だ。  と――  そんなふうに軽見さんのことを見ているときに限って、自分に注がれる視線に気がつく。  右端の列にいる小幡真美が、ぼくのほうに目を向けているのだった。ちらちらとぼくを見て、次にぼくの視線の先にいる軽見さんのほうを見る。  その視線にはとがめるような色合いがあって、ぼくは少しばかり居心地の悪い思いをする。  だからあわてて黒板に注目し、再びノートを取り始めるのだった。
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