五.

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五.

 侍と徒歩で半日ばかり、とうとうモ吉はお城へやって来た。 「良いかお主、殿が言うことは絶対だ。決して『いいえ』を言ってはならぬぞ。分かったな」 「へえ、お侍さま」  そして、モ吉は殿と対面することになったそうな。 「お主が村一番相撲が強いモ吉か?」  殿が尋ねた。 「へえ、そうでごぜぇます」  モ吉が答えた。 「年はいくつじゃ」 「おらぁ、捨て子なんで年がよくわかりません」 「捨て子?」  すると殿は何か企んだ。 「それならお主、誠の親に会いとうないか? いや、会いたいだろう」  そう言い殿はにやっと笑った。 「『いいえ』と言ったらどうなるか……分かっておるな?」 「……」 「後ろを見よ」   モ吉が後ろを見るとさっきの侍が刀を用意しておった。 「お侍さま〜」 「……」  モ吉は成す術を無くしておった。 「そうじゃあ」  するとモ吉はひらめいた。 「それなら相撲で決めましょ〜。おらが相撲で負けたら返事を言いますだぁ」 「何ぃ〜〜〜、ずる賢い奴めぇぇ〜〜」  殿は見得を切った。 「そこまで言うのならお主、二言は無いな」 「へえ、お殿さま。おらぁ言い訳が嫌いでごぜぇます」 「ならばモ吉。例えどんな相手だろうと文句は言わせぬぞ」  余裕たっぷりに殿は言った。 「へえ、お殿さま」  モ吉は了解した。すると殿はさっきの侍を呼び何やら耳打ちした。 「そのほう、頼んだぞ」  殿の命令を受け、さっきの侍はモ吉をどこかへ連れて行ったそうな。         つづく。。。
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