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六.
それから歩いて間もなく、やって来たのは森の中だった。
「お主の相手はあの大木だ」
侍が指差したのは大木のごとくがっしりとした体格の人間――ではなく、どう見ても本物の大木だった。
「お侍さま〜」
思わずモ吉は叫んだ。
「どうしたモ吉。怖じ気付いたか」
「そうではごぜぇません。こいつは人間じゃねぇ、ただの大木です。こいつとどうやって相撲を取ればいいんですか〜」
すると侍はこう言ったそうな。
「お主は強すぎて人間の相手はもうおらぬ。せめてお主の力がどれほどかを知るにはもはやこの大木しかない。これを倒すか引っこ抜き、その力がどれほどかを殿が見たいとおっしゃった」
「そんなぁ〜〜」
モ吉は再び窮地に立たされた。
「拙者が見張っておる。早くしろ」
そう言い侍は腕組みをしてそこで監視を始めた。
その大木はびくともせず、とうとう日が暮れた。そしてモ吉はどうがんばってもその大木を一寸も動かせなかったそうな。
「時間切れだ。城に帰るぞ」
「そんな〜」
「無理なものは無理だ。諦めろ」
仕方なくモ吉は諦め、侍と共に城へと戻って行った。
城へ戻るとさっそく侍は殿に報告した。
「なんてこってぇ〜」
モ吉はがっくりと肩を落とした。
「話は聞いた。お主、誠の親に会いたいな?」
殿はにやっと笑った。
「へ、へえ〜お殿さま〜〜〜」
モ吉は涙ながらに返事した。
つづく。。。
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