九.

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九.

 それから母親が外にある風呂に向かい、父親が火を起こしに出ようとした時 「おっとう、待ってくれ!」  モ吉が引き止めた。 「何だモ吉」  すると父親が立ち止まり振り向いた。 「おっとう、あれは本物のおっかあじゃねえ。口の回りから毛が伸びてたぞ。あれはきっと妖怪だぞ!」  モ吉は震えながらそう言った。 「なら、おらが確かめて来る。おめえは絶対部屋から出るんでねえぞ」  父親はそう言い残し部屋から出て行った。 「おっとう〜」  それから父親は戻って来るとモ吉に何も言わず、そのままいびきをかいて眠ってしまったそうな。  それから毎晩モ吉は悪夢にうなされるようになった。それはモ吉が風呂場の前に行き 「おっかあ、おらが背中流してやるぞ」  そう尋ねると 「来るなと言ったのに」  中から母親の低い声がし 「この嘘つきめ!」  突然勢いよく戸が開き中から全裸の母親が姿を現し、それを見たモ吉は叫んで目を覚ますというものだった。 「ぎゃああああ!」  またモ吉が悪夢にうなされていると心配して父親が言った。 「おめえ毎晩どんな夢見てそんなにうなされとる」  するとモ吉は答えた。 「おっかあが出て来る夢だぞ」 「おっかあが出て来て何で叫ぶんじゃ?」 「おっかあが風呂場から出て来たら、 髭面のおっちゃんになってるんだぞ!」と。         つづく。。。
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