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ウォーキングを始めて3週間が過ぎていた。早苗はいつもより30分ほど早く目が覚めた。歩くのにもだいぶ慣れてきたということもあり、今日は3駅分歩いてみようという意欲がわいてきたので、早々に身支度を済ませ、家を出た。さすがに歩き甲斐があったが、慣れてくれば毎日でもできそうな気がしていた。
駅に着いた早苗は、前日凍らせておいたペットボトルの水を、火照る頬に当ててホームで電車を待っていた。何気なく階段のほうを見ると、あがって来る人の中に、早苗を助けてくれた学ラン男子の姿があった。早苗はだんだん近づいて来る彼の姿を見て、どぎまぎしてしまった。
お礼を言ったほうがいいに決まっていたが、どうしてだろう、足が動いてくれない……。
そのうちに、彼のほうが早苗の姿に気づいたらしく、小走りに近づいて来たから、早苗も渋る足を前に動かし、彼の元へと近づいていった。
「あっ、あの……、このあいだは本当にありがとうございました」
早苗は深く頭を下げると、
「体、大丈夫でしたか?」
彼はあのときと変わらぬ口調で声をかけてくれた。
「ええ、おかげさまで、お腹の痛みもすぐに引きましたし、今ではちょっとした運動も始められているくらいなので……大丈夫です」
「それはよかったですね」
彼は相槌を打つと、早苗の目から離した視線を首から足のほうに向かって動かした。
「ちょっとした運動って、もしかしてジョギング、じゃなくて、ウォーキングですか?」
「えっ、何でわかるんですか?」
「だって、服装もそうですが、そのシューズ、ウォーキング用のものですよね」
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