贈る言葉~贋紳士に幸あれ~

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 中学最後の日に、ユズリハラから贈られた言葉を忘れたわけではなかったが、嶋根くんと会話を交わしたあの日の翌日から、早苗は自宅から専門学校までの道のりをママチャリで走ることにした。  と同時に、ランニングや筋トレにも挑戦した。食事については、制限するというよりも、調理方法や食材の質に気につけるようになった。  その甲斐あってか、2年に進級する頃には体重が6キロ落ち、ぽちゃぽちゃしていた腹や腿がかなり引き締まっていた。高校を卒業する頃の体重と比較すれば、まだ2キロ多い計算になるが、それでも、体つきは完全に別物になっていた。  早苗は2年に進級するタイミングで、マウンテンバイクを購入し、ママチャリを卒業した。いずれは嶋根くんのように、ロードバイクに乗れるようになりたい。その一心で体重を落としつつ、肉体を引き締めることに力を入れていたのだ。  嶋根くんとは、通学途中に何度も顔を合わせた。体型のことは一切口にしなかった嶋根くんだったが、マウンテンバイクに乗り始めて3ヶ月ほどたったとき、さらに引き締まってきた早苗の体について「かっこいい」と言ってくれた。  そして、勧めてくれたのだ―― 「小田切さん、自転車のセンスあるから、ロードに乗ってみればいいのに」と。
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