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「ずっと譲原くんのことが好きでした……」と。
すると、早苗が言い終わるや否や、譲原くんは目を見開いた。
顔を見るのも見られるのも恥ずかしくて、早苗は思わずうつむいてしまったが、もう引くに引けないところまできてしまったのだ。それに、これが最後のチャンスなんだと思うと、ずっと心に秘めていた気持ちを告げないという選択肢は残されていなかった。
「ずうずうしいお願いだとはわかっています。だから、彼女にしてくれませんか、なんて言えません。でも、ときどきでいいから、お茶したりできたら嬉しいなって、思ってて……」と。
思いの丈を告げ終わったとき、早苗はゆっくりと顔をあげると、譲原くんはぱちぱちぱちっと早いまばたきをし、突然、整った顔を早苗の横顔に近づけてきた。
早苗は、心臓の鼓動が一気に高鳴り、頬が熱くなるのが自分でもわかった。まさか、そんなことが起こるはずもないとは思いつつも、その一方で期待する自分がいた。
彼の顔がわずかに傾いだ。耳に吐息がかかる。肌に触れるか触れないかという寸前のところで、彼の唇が動くのが視界の片隅に映った。
すうっと耳の中を通り抜ける吐息まじりの囁き声。美しい声。憧れていた人の声が、耳の奥に届いた――
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