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美しいが、単調な声だった。絵に描いたような紳士の口から流れてきそうな穏やかな囁き声だったが、同時に残酷な罵声でもあった。
何事もなかったかのように、平然と顔を元の位置に戻し、差し出した封筒を振り切って歩き出す彼は、振り向きもせずに右手を投げやりに振りながら、
「高校行ったらチャリ通やめて、走って通うんだってなあ。頑張れよ~オダギリィ~! じゃあな、サイナラ~!!」
気心の知れた体育会系女子と、別れのあいさつでもするときみたいな口調で言い放って、校庭に向かっていった。
残酷な囁き声の余韻が冷めやらぬうち、追い打ちをかけるように嫌味ったらしい声援を贈られた早苗は呆然と立ち尽くしていた。
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