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ナオはレミアの囁いた言葉とともにプツンと意識を闇の中に溶かし、深い眠りに落ちたまま家路へと歩いて行く──
ナオの姿が見えなくなると、ホロミ先生は呆れたようにため息を吐いた。
「……殺したほうが早かったのに……なぜそうしなかったんだい?」
「殺したら色々と面倒事が増えるだけ。兄さんは頭が古いのよ」
──レミアの一言にホロミ先生はフッと笑う。
「……優しいな。お前は」
「……うっさい」
レミアは散らかったノートを鞄に入れ直すと、ホロミ先生を置き去りにして振り返ることなく、靴音を響かせて闇の中に消え去った。
「まったく……世話を焼かせる妹だ」
辺りが暗くなり始めると、路地裏に立ち並んだ街灯が一つ一つ静かに灯っていく──ホロミ先生はレミアが歩いて行った方向を見つめて呟いた。
「……その優しさがいつまで通じるだろうね……“ナンシア”……」
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