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夜の闇にネオンが煌めく人通りの多い繁華街──建物と建物の間の暗がりに立つ一人の青年が通り過ぎ行く雑踏をうつろな目で見つめている。
青紫色の髪に一点、白く染まった毛色が目立つ青年は美しく整った顔だちと白のYシャツ姿から、会社員や学生にも見えた。
《──♪》
すると、ひと昔前に流行った某女性アイドルグループの着信メロディが青年のズボンのポケットから突然鳴りだす──青年は白い柄の携帯電話を取り出し、誰かと通話を始めた。
「──“捕食魔”が消えた……?」
青年は依然として落ち着いた表情を保っているが、声に微かな動揺が滲んだ。
通話を終えた青年はうつろな目で星のない夜空を見上げ、ぼそっと呟いた。
「今夜は悲鳴が聞こえてこない……退屈……」
──FILE01.捕食魔事件──
End.
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