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──獅子縞高等学校/食堂にて
「ナオ! ほら、こっちにおいで♪」
茶髪の男子生徒が一人の丸眼鏡をかけた女子生徒に明るく声をかけると、呼ばれた女子生徒は露骨に嫌な顔を浮かべながら、指定された隣の席に座った。
「はあ……」
「どしたんだよ、ナオ。そんな浮かない顔してさ」
「そりゃ浮かない顔になって当然でしょ……高校デビューを心に決めて、地元から離れた高校選んだのにさ……よりにもよって中学の卒業式の日に私に告ってフラれた相手がなんで一緒の高校なのよ……」
「……運命ってやつかな」
「その発言キモいからやめて……コズミがずっと話しかけてくるから、入学してから三週間。誰も私に近づいてこないじゃない……ああ……もう高校デビュー失敗だわ……」
「まあまあ。顔見知りがいるのは別に悪い事だけじゃないさ」
「じゃあ……他になにがあるのよ?」
コズミは満面の笑みで人差し指を立てた──
「ぼっちにならずにすむ!」
「はあ……変人のあんたに絡まれるほうがぼっちよりもずっと羞恥プレイよ……」
「あははは」
コズミはふとナオの後ろを見ると、ナオに目配せを送った。
「……ああいうのよりかはマシだと思うけど?」
ナオは後ろを振り返ると、他の生徒と距離を離して一人静かに食事をしている女子生徒が目に入った。
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