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***
──夕陽が沈みかけた暗い路地裏をレミアは一人歩く。
レミアのあとに電柱の影から二人の影が顔を出した。
「もう三キロ歩いたけどレミアさんの家ってまだ遠いんだな……もう帰らない?」
「コズミが言い出したんでしょ? ここまで来たら私もスイッチ入っちゃった。レミアさんの家、私も知りたいし……レミアさんの家を見たら帰りましょう?」
「ナオがそう言うなら……」
二人はレミアの尾行を再開した──
しかし、角を曲がった先の十字路で彼女の姿はなくなっていた……。
「しまった……ここまで来て見失っちゃったか……」
「残念そうな顔には見えないけど?」
ナオは周囲を見渡す──暗くなりかけた夕暮れの時間帯もあってか、不気味なほどしんと静まり返った住宅街の空気感と時折聴こえてくる烏の鳴き声が無性に心細さを感じさせる。
「さっきからずっと暗い道ばかり……もしかするとレミアさん、わざとひとけのない道を選んで遠回りしてるのかも……」
「あんなに美人なのに顔を隠す必要あるか? ひょっとして……“誰かを殺した”とか?」
「悪い冗談はよして。でもそろそろ暗くなってきたし、帰りま──」
ナオはコズミのほうを振り返ると、コズミの後ろにある角を人影が横切った──
人影はまるで何かをひきずっているように見えた……。
胸騒ぎを覚えたナオは人影のあとを追いかけた──
「……お、おい! ナオ! どこ行くんだよ!」
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