四月の目覚め

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四月の目覚め

春なのに俊二はまだ目覚めなかった。朝から夜までこたつの中に入って眠りこけていた。世間は重ねた服を脱ぎ始める頃だ。しかし俊二は春の到来など歓迎したくもなかった。だからピシャリとドアを閉め春を部屋から閉め出したのだ。世間を騒がせているコロナウィルスも彼には関係なかった。田舎から送られてくる米は充分に残っていたし、毎日外で買ってくるのが面倒なので百均でまとめて買って置いたカップラーメンやふりかけの類も一ヶ月分はあった。俊二がこうして引きこもり始めたのには理由があった。彼はこの一ヶ月で急激に太り、部屋から出たくても出れなくなったのである。ある日だった部屋から出ようとしたら突然自分の体がドアに挟まって動けなくなった。どうにか暴れて抜けられたが、外には出られず、それから何度外に出ようとしたがダメだった。ダイエットした方がいいのだろうか、と彼は考えたが、俊二は生まれた時からめんどくさがりで動きたがらない子供であった。今や部屋の床は彼の体重で凹んでしまい、もう底が抜けそうになっていた。彼に必要なのはダイエットする意思であろう。しかし今の俊二にはダイエットなど考えられず、こうしてただ床が抜けるのを待つだけだった。
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