さよなら俺の平穏

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さよなら俺の平穏

翌日の朝、自分の寮部屋の中で目を覚ます。ああ、この暖かいお日様が今は憎たらしいよ。 2人部屋ではあるけど俺しか住んでいないため自由に共有スペースの洗面所で顔を洗い、歯磨きして、寝癖を整える。 せっせと制服に着替えて、いざ登校準備完了。 部屋を出ると隣の部屋から丁度水瀬も出てきた。びっくりなことに隣の部屋には水瀬が住んでいるのだ。 「おー水瀬はよ」 「マサキっちおはよー」 そのままの流れで一緒に購買に向かう。俺と水瀬はどっちも朝は軽食派だから気が合うのだ。 「なあ、今日から変な嫌がらせとかされちゃうかな俺」 「まあ宇宙人くんが変装を解かない限りは大丈夫だよ」 「…やっぱり変装なんだなあれ」 「王道BLでは基本だからね。大体の本でもまあ後半の方で変装解くのが多いし安心しなよ」 じゃあ信じよう水瀬のことを。裏切らないと信じてる。 すると噂をしてたら…というあるあるな展開で裕二の喋り声が聞こえてきた。目を向けると奥の廊下の方に裕二を挟んで両脇にも誰かがいた。どうせ昨日のイケメンズ2人だ。 …てか裕二ってあんな派手な髪色だったっけ。 「…ごめんマサキっち。やっぱり安心出来ないかも」 「あ?なんで?」 「おーい正樹ー!!!」 あっちもこちらに気づいたのか凄い勢いで走ってくる。…謎の美少年が。 口をあんぐり開けながら目の前まで来た美少年をポカンとしながら見つめる。 「おはよう正樹!どうだ!オレの本当の姿!!」 これは確かに…終わったかもしれない。「変装解くのはやっ」とボソリと呟く水瀬の声がどこか遠く聞こえた。 結局その流れで裕二に誘われて断れない俺は食堂に行くことになってしまった。水瀬も一緒に行こうと言って巻き込むつもりだったが振り向くと誰もいなかったかのように消えていた。 もう2人の視線が痛い。でも風早の視線はまだ怖くなくなった気がする。 食堂に入ると裕二の美しさに他の人達も騒然としていた。「え!あんなやついたか!?」「ちょー天使じゃん」とか評価は極めて良好だった。 「ここに座ろうぜ!!」 俺らは裕二に従ってそのテーブル席で食べることにした。 「ねえ、正樹。ちょっとこっち来て」 「あ?…ああなんだよ」 椅子の前に立ったままの爽やかくんver.の風早が手招きしながら珍しく声を掛けてきた。風早の近くまで行くと両肩を手で押されてその席に無理やり座らされた。 「は?お前なんで…」 「ねえ不良くん。裕二の隣譲ってあげるよ」 不良にニコニコスマイルで昨日俺が座ってた位置の席へと誘導した。てか不良くんて風早にすら本名おしえてないのかよ。 不良くんは戸惑いながら裕二の隣に移動した。風早はニコニコな表情を変えないまま俺の隣に腰掛けた。 それを目をぱちくりさせながら見ていた裕二は声を荒らげる。 「なんだよ!正樹はオレの隣決定なんだよ!!」 「ええー?でもさっき裕二は気づかなかったかもしれないけど正樹の背中に大量の鳥の糞が落ちてきたんだよまあ俺が落としてあげたけど」 「なっ…!別に気にしねえよなんならオレが正樹の糞落としてやりたかった!!」 「正樹の糞ゲッチョンゲッチョンで死ぬほど臭かったのに?」 「そうだよ!!」 なんだこの謎ハーレム嬉しくねえよ…。 糞なんてかぶってないし俺の糞っていうと誤解されそうだからやめて欲しい。あと置いてかれている不良がとてつもなく可哀想だ。
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