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「ゆ、裕二、誰ですかそのゴリズンとかと言う奴は!」
「ゴリズンって…ゴリラみたいな名前だな、いや、ゴリラが好きなのか!?」
水瀬曰く、蒼=副会長、そして会長が焦りながら顔を強張らせる。
「違う…田中、ゴリズンぅぅ…!!」
「た、田中ゴリズン?」
イケメングループ内どころか食堂内で困惑が走っていた。やっぱり偽名を教えてよかったかもしれない。
安心していた束の間に、ずっと黙り込んでいた風早が久しぶりに口を開いた。
「…可哀想に、聞いて、裕二」
嫌な予感がしてきて唾をごくりと飲み込んでそれを凝視する。
「田中ゴリズンはね、偽名なんだよ」
裕二はそれを聞いた瞬間ショックかのように目を見開いて、さらに顔を青くさせると再び大量の涙が目から零れ落ちて、膝から床に崩れ落ちた。
「う、うそ…なんで?俺に嘘ついたの??」
「彼が何を考えているかはまったくだよね…そして本名は八神 正樹。もしかしたら本当は裕二のことが嫌いだったのかもね」
次々と厳しい言葉を裕二に突きつける風早。どこか愉しそうな様子だった。いや、これはきっと俺への嫌がらせだろう。風早の発言のせいで食堂内の雰囲気が非常に悪い。
「…おい!!」
じっとしていられる訳もなくドアを力強く開けて食堂内に足を踏み出す。水瀬は「おいバカ!」と焦って止めようとしてきたがスルーする。
「風早てめえ、そんなに俺のことが邪魔なのかよ」
俺の登場を恐らくつまらなそうに思っているのだろう。肘をついて口元を覆う半目なそいつを怒りのこもった眼差しでひと睨みした。
「なあ、裕二」
今度は裕二の方へ振り向く。その瞬間怯えたようにビクリと肩を震わせていたが、気にせず言葉を吐いた。
「確かに最初はちょっと警戒してよく分かんねえ偽名で嘘ついちまったけどさ、警戒してたのがアホらしいくらい裕二は純粋な子だったし、嫌いなんて滅相もない。つーかむしろお前のこと普通に好きだぞ」
そう、イケメンズが居なきゃまあよかったんだ。安心させるような笑みを浮かべてみせる。裕二もそれを聞いてホッとしたのか涙を拭いて口元を緩ませていた。
これで大丈夫だろ。重い空気だったがまだ過ごしやすい雰囲気にはなった。
「おい…イチャイチャしている中悪いが、お前が田中ゴリズンか?」
「違います、八神 正樹です」
嫌味たらしい会長が俺と裕二の間にまさかの乱入。話聞いてた??
「裕二がお前みたいなぷっちょ野郎を好きだなんて…許さねえからな」
そして俺のことを敵意を含んだ目で睨んできた。イケメンの効果もあるためかより怖く感じる。
俺はイケメングループ=生徒会の人達の食堂を出ていく姿を見つめながら、これからやべえかもしれない、と危険を悟った。
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