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「委員長!やばいねん、山田くんが体育館裏で集団リンチされとる!」
ドアを叩きつけるように開けて、急いで走ってきたからか膝に手を当てて荒くなった息を整える関西人。
「…!今行く!宮前、代わりに正樹のことを頼む」
「…わかった」
委員長の顔つきは一気に風紀モードに変化して今度は委員長が出て行った。
委員長の足音が聞こえなくなると関西人、宮前が話しかけてきた。
「それで話はどうなったん?」
「会長が全て悪いということになったっす」
「はは、やっぱ委員長の前意外になると敬語は使わへんのな」
もう片方のソファが空いているのに関わらず、宮前は図々しく俺の隣に座ってきた。
「んとー、八神 正樹やっけ?正樹って呼んでもええか?」
「なんとでも大丈夫っすよ」
「おおきに!正樹も俺のこと奏佑って呼んでな」
「了解っす、奏佑って名前?」
「せや、確かに言ってへんかったな」
奏佑先輩が距離を詰めてくる。体が密着してる気がする。
「ん?お茶まだ半分しか飲んでへんのかいな」
テーブルの飲みかけのお茶を見て不満そうに言われる。そんなに自分が入れたお茶を飲んで欲しいのか?
「今全部飲んじゃいます」
お茶が入ったコップを持って一気に飲み干して、中身がなくなったと確認してからまたテーブルに戻した。
「あー堪忍、全部飲めとかそういうわけじゃなかったんや」
「…はあ」
「まあ、委員長が戻ってくるまで世間話でもしような」
俺の顔を覗き込んでにっこりすると、今度は肩を組んできた。いちいち密着しないと気がすまねえのかなこの人。これはしつこいのが嫌いな人に嫌われるタイプ。
「そんで正樹は、好きな人っているん?」
唐突すぎて目がまん丸になった。
「…いきなりすか?」
「ええやん恋バナ好きなんよ俺ー!」
えへへーとだらしない笑みを浮かべる。
「女子かよ…それで好きな人っすか、初恋すらまだっすね」
「え!?人生つまんなそうやな」
「え?そこまで??」
ギョッとした顔で哀れみの目を向けられた。うわーすげえイラつくぞこの人。
「恋って何がいいんすか」
「せやな…まあ、世界が薔薇色に変わる!」
「うわあしょっぱ」
「ちょう黙れ!お前も恋したらそんなん言えんようになるからな!」
「…つーことは先輩にはいるんすか」
疑問を持ったから聞いてみる。あ、ダメだやっぱり恋バナってニヤケちゃう。
「興味深々やないか…まあせやな、ついさっき出来た」
「は?さっき!?」
斜め上の返答に目が飛び出しそうになる。
「…なあ正樹、今の体の調子はどない?」
「は?いきなり何言って…」
あ?奏佑先輩の雰囲気がちょっと変わった??
それに気づいたのと同時に胸が重く、ドクンと脈を打ちはじめた。その苦しさに目を見開いて思わず奏佑先輩の方に倒れ込んでしまうが、先輩はまるでわかっていたかのように華麗に受け止めて抱きしめてくる。
「はーっ、はーっ…!」
なんだこれ、え、なんだこれ。
先輩の体温の中で熱い息を何回も吐き出しながら激しく困惑する。
顔が、体が、全身が火のように火照っている。熱い。体が震える。
「やだ、なんだよ、これ…!」
「安心しぃ、俺が助けたる」
糸のように細くして笑う目は異様な光を宿していた。
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